2025年03月20日

統合失調症(とうごうしっちょうしょう)は、精神疾患の一つで、現実との接触が困難になり、思考、感情、行動に影響を与える病気です。主に若年成人期に発症し、しばしば幻覚(特に聴覚幻覚)や妄想が現れることが特徴です。
主な症状:
-
陽性症状(過剰または異常な思考や行動)
- 幻覚:特に「声が聞こえる」といった聴覚幻覚が一般的です。
- 妄想:自分が特別な力を持っている、または他人が自分を監視しているというような、非現実的な信念を持つこと。
- 思考の障害:思考がまとまりにくい、言葉がうまくつながらない、話の内容が支離滅裂になることがある。
-
陰性症状(機能や感情が減退する)
- 感情の平坦化:喜びや興奮が感じられない。
- 社会的引きこもり:対人関係や仕事を避ける。
- 意欲の低下:日常的な活動に対する興味やエネルギーが失われる。
-
認知症状(認知機能の障害)
- 記憶力や注意力の低下。
- 問題解決能力や計画性の低下。
統合失調症の原因:
統合失調症の正確な原因は不明ですが、遺伝的要因や環境的要因(ストレスや薬物の乱用など)が関与していると考えられています。脳内での神経伝達物質、特にドーパミンやグルタミン酸の異常が関わっているとも言われています。
治療方法:
統合失調症は完治が難しい場合がありますが、薬物療法と心理社会的支援によって症状を管理し、生活の質を向上させることが可能です。
- 薬物療法:抗精神病薬(抗精神病薬)が主に使われ、症状の改善に役立ちます。新しい薬は副作用が少ないことが特徴です。
- 心理社会的療法:認知行動療法(CBT)などが、患者が現実と向き合い、ストレスや症状に対処するためのスキルを学ぶ手助けになります。
社会的な理解と支援:
統合失調症の患者が社会に復帰するためには、周囲の理解と支援が重要です。家族や友人、医療スタッフが協力し、患者の自立を支えることが大切です。
統合失調症による障害年金受給の3つのポイント
初診日の特定(ポイント1)
障害年金を受給するためにはまず初めに初診日を特定する必要があります。
初診日とは当該ご病気で初めて医師の診察を受けた日を言います。症状が出て初めて病院に行き医師の診察を受けた日が初診日であり病名が決まった日ではありません。
統合失調症を例にとると不眠やイライラなどの症状が出て内科を受診した後に紹介で精神科を受診した場合は不眠やイライラなどで内科を受診した日が初診日となります。
初診日の特定は障害年金の手続きを行う上で大変重要で初心を基準に後で述べる保険料の納付要件を満たしているかどうかが判断され、また受給できる年金が障害基礎年金か障害厚生年金かを判断するのも初診日です。
初診日の段階で学生や無職で国民年金に加入されていた場合は障害基礎年金の受給対象に、ご自身で働かれていて厚生年金に加入していた場合には障害厚生年金の受給対象となります。
保険料の納付要件を満たす(ポイント2)
統合失調症によって障害年金を受給するためには初診日を基準に国民年金保険料を一定期間を収めている必要があります。
一定期間とは障害の原因となった傷病にかかる初診日の前日においてその初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があるときはその被保険者期間にかかる保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間がその被保険者期間の2/3以上を満たしていること
初診日の前日において初診日の属する月の前々月までの一年間に保険料納付済期間および保険料免除期間以外の被保険者期間がない(滞納期間がない)場合は保険料要件を満たしたこととされます。
障害年金の等級に該当する病状(ポイント3)
統合失調症で障害年金を受給するためには病状が障害年金の認定基準に該当している必要があります。
統合失調症の障害認定基準
1級・・・統合失調症によるものにあっては高度の残遺状態または高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害その他妄想・幻覚等の異常体験が顕著なため常時の介護を必要な者
2級・・・統合失調症によるものにあっては残遺状態または病状があるため人格変化、思考障害その他妄想・幻覚等の異常体験があるため日常生活が著しい制限を受ける者
3級・・・統合失調症によるものにあっては残遺状態または病状があり人格変化の程度は著しくないが思考障害その他妄想・幻覚等の異常体験があり労働が制限を受ける者
※統合失調症は予後不良の場合もあり障害の状態に該当すると認められるものが多い。しかし病気になった後、数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、またその反面急激に憎悪しその状態を持続することもある。したがって統合失調症として認定を行う者に対しては発病時からの療養及び症状の経過を充分に考慮する。
障害年金の受給と就労
精神の障害による障害年金の受給において就労しているということが審査の対象となる場合があります。
統合失調症やうつ病の場合にはフルタイムで就労している場合には障害年金の対象とならない場合があります。
一方で就労継続支援施設による就労や障害者枠での就労の場合には就労していても障害年金の受給対象となる場合もあります。
さらに就労を行っている場合も職場での上司や同僚のサポートの程度、就労に対しての職場の配慮の程度、仕事の種類・内容、従事している期間、就労状況およびそれらによるご病気への影響も障害年金の審査において対象となります。
統合失調症による障害年金の受給例
受給年金
障害厚生年金2級(5年分遡及請求)
病歴
30代の男性でお母様と同伴でご自宅でお話をお伺いいたしました。
学生時代に授業でエイズの勉強をしたことによる記憶から血や注射器に恐怖感を抱くようになりました。
大学卒業後一時就職しましたが営業活動などで恐怖感や不安感を強く覚え仕事になりませんでした。
また通勤時も車内で自分が痴漢をしてしまうのではないかといった恐怖感、強迫観念を覚え心配になり初診時の病院を受診しました。
初診時の病院では強迫性障害と診断されましたが担当医師との折り合いが悪くまた説明にも納得できなかったため大学病院を受診することとしました。
大学病院を一年間ほど受診しましたが途中で受診を中断しました。
その後受診しない期間が一年ほどありましたが病状が改善しなかったため最寄りの病院を再度受診することとしました。
最寄りの病院では統合失調症と診断され投薬治療行いましたが病状は一進一退であまり改善しませんでした。
その後体調が悪化した時期があり一ヶ月ほど入院する期間もあり入院を機に休職していた職場を退職しました。
その後最寄りの病院と大学病院並行して受診する期間が継続しました。
現在は就労ができず日常生活にも支障が生じ母親のサポートを受けて生活しているとのことでした。
また夜中に起きてしまい大きな声でしゃべり続けることもあるとのことでした。
社会保険労務士の対応
初診時の病院は残っておりまたカルテも残っており強迫性障害の受診状況等証明書の作成をしていただくことができました。
また幸運にも障害認定日(初診日から1年6か月後の日)の受診病院にカルテが残っており診断書の作成も行っていただけました。
現在の病状を記載した診断書に関しては障害年金の請求においては大変重要な役割を果たしますのでご自身にお話を伺えない部分はご両親にお話をお伺いし詳細に診断書の作成依頼書を作成し担当の先生にお渡ししました。
まとめ
初診時の病院にカルテが残っていたこと、また幸運にも障害認定日当時の病院にカルテが残っており担当医師の協力により障害認定日当時の診断書を入手できたことがあり最大5年分の遡及請求を行うことができました。
また現在のご病状に関しても就労ができず夜中に大声で話をしてしまうなど日常生活にも著しい支障が生じていましたので、その点について詳しく担当の医師に説明することで障害厚生年金二級の受給に成功しました。
カテゴリ:障害年金の基礎知識