障害年金の基礎知識

知的障害による障害年金の受給のための外したくない基礎知識

知的障害は障害年金の対象となる障害です。一方で障害年金を受給するためにはいくつかの条件をクリアする必要があります。ここではその条件について詳しくご説明させていただきます。

障害年金を受給するためには大きく三つの条件をクリアする必要があります。初診日の特定、保険料の納付要件、病状(診断書)が障害年金の等級に該当していることの三つの要件です。

知的障害と障害年金

知的障害とは

知的障害(ちてきしょうがい)は、知能や適応行動において通常よりも著しい遅れが見られる状態を指します。これにより、学習や日常生活のスキルに影響が出ることがあります。知的障害は、通常、生まれつきのものであり、発達期における認知機能の発達に遅れがある場合に診断されます。

知的障害の特徴は以下のようなものです:

  1. 知的能力の低下:標準的な知能指数(IQ)が70未満であることが一般的です。

  2. 適応行動の困難:日常生活での自立に必要なスキル(例:コミュニケーション能力、自己管理、社会的適応など)に支障をきたすことがあります。

  3. 発症年齢:通常、18歳未満で発症し、発達過程で現れます。

知的障害は、その重度によって以下のように分類されることがあります:

  • 軽度:独立して生活することができる場合もありますが、支援が必要なこともあります。

  • 中度:日常的な支援が必要で、職業訓練や社会参加の支援を受けながら生活します。

  • 重度:自立した生活が難しく、24時間の支援が必要です。

  • 最重度:非常に高度な支援が必要で、コミュニケーションが困難であることが多いです。

知的障害の原因は多岐にわたります。遺伝的要因、出生時の問題、脳の発達障害、環境的要因などが影響することがあります。適切な教育や支援を受けることで、社会での自立を促すことが可能です。

知的障害と療育手帳

療育手帳(愛の手帳)の区分

神奈川では知的障害はA1(最重度)、A2(重度)、B1(中度)、B2(軽度)の4段階に分かれています。

東京では1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)の4段階に分かれています。

療育手帳と障害年金は別の制度ですので療育手帳を持っていなくとも障害年金のお手続きを行うことは可能です。

一応神奈川ではB2(軽度)以上から療育手帳の対象となりますので障害年金におきましてもB2(軽度)以上の状態の場合に障害年金のお手続きを進めていくこととなります。

IQと障害年金

IQは障害年金の審査におきましても一つの審査対象の要素となります。

大まかな基準といたしましてIQ50以下の場合は障害基礎年金1~2級の可能性があるものとして審査が行われます(障害年金のガイドライン)。

一方で70以下50以上の場合でも就労状況、日常生活能力の程度により障害年金の対象となる場合がありますのであきらめずにお手続きを行うことをお勧めいたします。

初診日の特定

初診日の特定の必要性

障害年金を受給するためには初診日を特定する必要があります。

初診日とは当該傷病によって初めて医師また歯科医師の診断を受けた日を言います。

障害年金を受給するために初診日を特定する必要がある理由は初診日を基準に障害基礎年金障害厚生年金(障害共済年金)どの制度から障害年金が支給されるかが決定されること。

障害年金を受給するためには保険料の納付要件を満たす必要があります。初診日を基準に初診日の前々月までの一定の期間国民年金保険料を支払っている必要があります。保険料の納付要件が障害年金の受給要件となっている理由は障害年金も入院保険などの保険の一種であるためことが起こる前に保険料を支払っている必要があるという理由によります。

原則的に障害年金の請求をするためには初診日をカルテに基づいた証明書その他の資料により特定する必要があります。

知的障害による初診日の特定

知的障害は生来的な障害のため初診日は例外的に誕生日と決まっています。このため他の障害と異なり知的障害の場合にはことさら初診日を特定する必要はありません。

障害認定日

障害認定日とは原則として初診日から一年六か月後の日をいいこの日から障害年金の請求を行うことができます。

一方で知的障害は生来的な障害で初診日が例外的な扱いをされています。このことから障害認定日においても原則とは異なる扱いが行なわれています。

上記のように知的障害による障害年金の初診日は誕生日と決められていますので自動的に知的障害による障害年金の請求は20歳前傷病による障害基礎年金となります。

二十歳前傷病による障害基礎年金とは初診日が20歳の誕生日の前日よりも以前にある障害年金の請求を言います。

そして二十歳前傷病による障害基礎年金の障害認定日は二十歳の誕生日の前々月、または初診日から1年6か月後の日の内、遅い方の日が該当します。

上記のように知的障害による障害年金は基本的に20歳の誕生日から行うことができますので20歳の誕生日を迎える前に事前準備を行うことをお勧めします。

保険料の納付要件

障害年金を受給するためには初診日を基準に一定の国民年金保険料を支払っている必要があります。

一方で知的障害による障害年金の初診日は誕生日と決められていますので保険料納付要件を満たす必要はありません。

なぜなら知的障害による障害年金の請求は20歳前傷病による障害基礎年金に該当し、初診日が20歳前にある場合は国民年金保険料の納付義務がないため保険料の納付要件は問題とならないからです。

病状が障害年金の等級に該当していること

障害基礎年金の等級

知的障害により障害年金を受給するためには障害の程度が障害年金の等級に該当している必要があります。

知的障害による障害年金は20歳前傷病による障害基礎年金として障害基礎年金から支給されます。障害基礎年金は一級と二級の等級がありますので知的障害による障害が障害基礎年金の1級又は2級に該当する場合に障害年金の受給が認められます。

障害基礎年金の一級または二級は下記のような場合に該当します(障害認定基準)。

1級・・・知的障害があり食事や身の回りのことを行うのに全面的な援助が必要であってかつ会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため日常生活が困難で常時援助を必要とするもの

2級・・・知的障害があり食事や身の回りのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であってかつ会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため日常生活であって援助が必要なもの

知的障害の認定にあたっては知能指数のみに着眼することなく日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断されます。

また知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは併合認定の取扱いは行わず諸症状を総合的に判断して認定されます。

日常生活能力等の判定にあたっては身体的機能及び精神的機能を考慮の上社会的な適応性の程度によって判断するように努めます。

知的障害による障害年金の受給と就労

精神の障害により障害年金の請求を行う場合就労しているとそのことがマイナスの評価につながると言われていますが知的障害の場合には必ずしもそのようなことはありません。

精神の障害により障害年金を請求する場合に終了している場合にマイナスの評価が行われるのは就労していると日常生活能力が向上したものと判断される場合があるからです。

一方で知的障害の場合には就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず雇用契約により一般就労している場合であっても援助や配慮の下で労働に従事しているなどの場合は障害年金の対象となります。

このため労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものとは捉えず、現に労働に従事している者についてもその療養状況を考慮するとともに仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、その他の従業員との意思疎通の状況等を充分確認した上で日常生活能力が判断されます。

知的障害による障害年金の請求と診断書

知的障害による障害年金の請求を行う場合において担当医師が作成する診断書の内容は大変重要な意味を持ちます。

このため担当医師に障害年金診断書の作成を依頼する場合は就労状況や日常生活状況本当の支障が生じている部分をできるだけ明確に伝える必要があります。

知的障害による障害年金の請求において診断書の裏面の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」は特に重要です。

知的障害の場合は「日常生活能力の程度」は下段の知的障害の欄に記入します。精神の障害と知的障害が併存する場合は医師の判断でどちらかメインの障害の方を記入します。

日常生活能力の判定

日常生活能力の判定は七項目ありそれぞれ四段階で担当医師の判断が行われます。

【四段階の判断】

□できる(A)

□自発的にできるが時には助言指導を必要とする(B)

□自発的かつ適正に行うことは出来ないが助言や指導があればできる(C)

□助言指導をしても出来ないもしくは行わない(D)

【七項目】

(1)知的障害を認めるが社会生活は普通にできる

(2)知的障害を認め家庭内での日常生活は普通にできるが社会生活には援助が必要である(例えば簡単な漢字は読み書きはでき会話も意思の疎通が可能であるが抽象的なことは難しい。身辺生活も一人でできる程度)

(3)知的障害を認め家庭内での単純な日常生活ができるが時に応じて援助が必要である(例えばごく簡単な読み書きや計算はでき、助言などがあれば作業は可能である。具体的指示であれば理解ができ身辺生活についても概ねひとりでできる程度)

(4)知的障害を認め日常生活における身辺の周りのことも多くの援助が必要である(例えば簡単な文字や数字は理解でき保護的環境であれば単純作業は可能である。習慣化していることであれば言葉での指示を理解し身辺生活についても部分的にできる程度)

(5)知的障害を認め身の回りのこともほとんどできないため常時の援助が必要である(例えば文字や数の理解力がほとんどなく簡単な手伝いもできない。言葉による意思の疎通がほとんど不可能であり身辺生活の処理も一人ではできない程度)

※一般的には七項目の(3)~(5)のどれかが付く場合は障害年金の対象となる可能性があります。

知的障害による障害年金と所得制限

知的障害による障害年金は20歳前傷病による障害年金として保険料納付要件は問われません。このため国民年金保険料を支払っていない場合にも障害年金を受給することができます。

そこで制度のバランスをとるため所得制限が設けられており一定以上の所得がある場合は障害年金の半額また全額が支給停止となります。

前年度の所得が4,721,000円を超える場合は障害年金の全額が支給停止となります。

扶養親族がいる場合は扶養親族1人につき所得制限額が38万円が加算されます。

前年度の所得が3,704,000円を超える場合は障害年金の半額が支給停止となります。

こちらも扶養親族がいる場合は扶養親族1人につき所得制限額が38万円が加算されます。

減額される期間は10月から翌年9月の支給分が全額または半額の支給停止となります。

 

 

 

 

 

統合失調所による障害年金受給の為の最も重要な3つのポイント

社労士
社労士

統合失調症(とうごうしっちょうしょう)は、精神疾患の一つで、現実との接触が困難になり、思考、感情、行動に影響を与える病気です。主に若年成人期に発症し、しばしば幻覚(特に聴覚幻覚)や妄想が現れることが特徴です。

主な症状:

  1. 陽性症状(過剰または異常な思考や行動)

    • 幻覚:特に「声が聞こえる」といった聴覚幻覚が一般的です。
    • 妄想:自分が特別な力を持っている、または他人が自分を監視しているというような、非現実的な信念を持つこと。
    • 思考の障害:思考がまとまりにくい、言葉がうまくつながらない、話の内容が支離滅裂になることがある。
  2. 陰性症状(機能や感情が減退する)

    • 感情の平坦化:喜びや興奮が感じられない。
    • 社会的引きこもり:対人関係や仕事を避ける。
    • 意欲の低下:日常的な活動に対する興味やエネルギーが失われる。
  3. 認知症状(認知機能の障害)

    • 記憶力や注意力の低下。
    • 問題解決能力や計画性の低下。

統合失調症の原因:

統合失調症の正確な原因は不明ですが、遺伝的要因や環境的要因(ストレスや薬物の乱用など)が関与していると考えられています。脳内での神経伝達物質、特にドーパミンやグルタミン酸の異常が関わっているとも言われています。

治療方法:

統合失調症は完治が難しい場合がありますが、薬物療法と心理社会的支援によって症状を管理し、生活の質を向上させることが可能です。

  • 薬物療法:抗精神病薬(抗精神病薬)が主に使われ、症状の改善に役立ちます。新しい薬は副作用が少ないことが特徴です。
  • 心理社会的療法:認知行動療法(CBT)などが、患者が現実と向き合い、ストレスや症状に対処するためのスキルを学ぶ手助けになります。

社会的な理解と支援:

統合失調症の患者が社会に復帰するためには、周囲の理解と支援が重要です。家族や友人、医療スタッフが協力し、患者の自立を支えることが大切です。

統合失調症による障害年金受給の3つのポイント

初診日の特定(ポイント1)

障害年金を受給するためにはまず初めに初診日を特定する必要があります。

初診日とは当該ご病気で初めて医師の診察を受けた日を言います。症状が出て初めて病院に行き医師の診察を受けた日が初診日であり病名が決まった日ではありません。

統合失調症を例にとると不眠やイライラなどの症状が出て内科を受診した後に紹介で精神科を受診した場合は不眠やイライラなどで内科を受診した日が初診日となります。

初診日の特定は障害年金の手続きを行う上で大変重要で初心を基準に後で述べる保険料の納付要件を満たしているかどうかが判断され、また受給できる年金が障害基礎年金か障害厚生年金かを判断するのも初診日です。

初診日の段階で学生や無職で国民年金に加入されていた場合は障害基礎年金の受給対象に、ご自身で働かれていて厚生年金に加入していた場合には障害厚生年金の受給対象となります。

初診日に関して更に詳しく

保険料の納付要件を満たす(ポイント2)

統合失調症によって障害年金を受給するためには初診日を基準に国民年金保険料を一定期間を収めている必要があります。

一定期間とは障害の原因となった傷病にかかる初診日の前日においてその初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があるときはその被保険者期間にかかる保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間がその被保険者期間の2/3以上を満たしていること

初診日の前日において初診日の属する月の前々月までの一年間に保険料納付済期間および保険料免除期間以外の被保険者期間がない(滞納期間がない)場合は保険料要件を満たしたこととされます。

保険料の納付要件についてさらに詳しく

障害年金の等級に該当する病状(ポイント3)

統合失調症で障害年金を受給するためには病状が障害年金の認定基準に該当している必要があります。

統合失調症の障害認定基準

1級・・・統合失調症によるものにあっては高度の残遺状態または高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害その他妄想・幻覚等の異常体験が顕著なため常時の介護を必要な者

2級・・・統合失調症によるものにあっては残遺状態または病状があるため人格変化、思考障害その他妄想・幻覚等の異常体験があるため日常生活が著しい制限を受ける者

3級・・・統合失調症によるものにあっては残遺状態または病状があり人格変化の程度は著しくないが思考障害その他妄想・幻覚等の異常体験があり労働が制限を受ける者

※統合失調症は予後不良の場合もあり障害の状態に該当すると認められるものが多い。しかし病気になった後、数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、またその反面急激に憎悪しその状態を持続することもある。したがって統合失調症として認定を行う者に対しては発病時からの療養及び症状の経過を充分に考慮する。

障害年金の受給と就労

精神の障害による障害年金の受給において就労しているということが審査の対象となる場合があります。

統合失調症やうつ病の場合にはフルタイムで就労している場合には障害年金の対象とならない場合があります。

一方で就労継続支援施設による就労や障害者枠での就労の場合には就労していても障害年金の受給対象となる場合もあります。

さらに就労を行っている場合も職場での上司や同僚のサポートの程度、就労に対しての職場の配慮の程度、仕事の種類・内容、従事している期間、就労状況およびそれらによるご病気への影響も障害年金の審査において対象となります。

統合失調症による障害年金の受給例

受給年金

障害厚生年金2級(5年分遡及請求)

病歴

30代の男性でお母様と同伴でご自宅でお話をお伺いいたしました。

学生時代に授業でエイズの勉強をしたことによる記憶から血や注射器に恐怖感を抱くようになりました。

大学卒業後一時就職しましたが営業活動などで恐怖感や不安感を強く覚え仕事になりませんでした。

また通勤時も車内で自分が痴漢をしてしまうのではないかといった恐怖感、強迫観念を覚え心配になり初診時の病院を受診しました。

初診時の病院では強迫性障害と診断されましたが担当医師との折り合いが悪くまた説明にも納得できなかったため大学病院を受診することとしました。

大学病院を一年間ほど受診しましたが途中で受診を中断しました。

その後受診しない期間が一年ほどありましたが病状が改善しなかったため最寄りの病院を再度受診することとしました。

最寄りの病院では統合失調症と診断され投薬治療行いましたが病状は一進一退であまり改善しませんでした。

その後体調が悪化した時期があり一ヶ月ほど入院する期間もあり入院を機に休職していた職場を退職しました。

その後最寄りの病院と大学病院並行して受診する期間が継続しました。

現在は就労ができず日常生活にも支障が生じ母親のサポートを受けて生活しているとのことでした。

また夜中に起きてしまい大きな声でしゃべり続けることもあるとのことでした。

社会保険労務士の対応

初診時の病院は残っておりまたカルテも残っており強迫性障害の受診状況等証明書の作成をしていただくことができました。

また幸運にも障害認定日(初診日から1年6か月後の日)の受診病院にカルテが残っており診断書の作成も行っていただけました。

現在の病状を記載した診断書に関しては障害年金の請求においては大変重要な役割を果たしますのでご自身にお話を伺えない部分はご両親にお話をお伺いし詳細に診断書の作成依頼書を作成し担当の先生にお渡ししました。

まとめ

初診時の病院にカルテが残っていたこと、また幸運にも障害認定日当時の病院にカルテが残っており担当医師の協力により障害認定日当時の診断書を入手できたことがあり最大5年分の遡及請求を行うことができました。

また現在のご病状に関しても就労ができず夜中に大声で話をしてしまうなど日常生活にも著しい支障が生じていましたので、その点について詳しく担当の医師に説明することで障害厚生年金二級の受給に成功しました。

 

 

 

 

障害年金の事後重症請求とは(知っておきたい3つの請求方法)

障害年金には認定日請求、遡及請求、そして事後重症請求の3つの請求方法があります。

認定日請求は障害認定日(初診日から1年6か月後の日)以降三ヵ月以内の診断書を障害認定日から一年以内に提出することで行う請求方法です。

初診日とはご病気の症状が出て初めて医師(歯科医師)の診察を受けた日を言います。病名が決まった日ではありません。

障害認定日とは初診日から1年6か月後の日を言い原則的にこの日から障害年金の請求を行うことが出来るようになります。

遡及請求は障害認定日から一年を過ぎて請求する場合に障害認定日の診断書と現在の病状を記載した診断書二通を提出することで行う請求方法です。

遡及請求の場合は障害認定日から長期間経過しても障害年金の請求を遡って行うことが出来るため、過去の分の年金も一度に請求することが出来ます(最大で5年分)。

事後重症請求は障害認定日以後三か月以内の診断書を提出せず、現在の病状を記載した診断書1通のみを提出して行う障害年金の請求方法です。

事後重症請求について

事後重症請求は原則として障害認定日当時は症状が軽かったがその後重くなり請求時(現在)に障害年金の等級に該当するような病状になったときに行う請求方法です。

一方で上記のように以前は軽かった病状が事後に重くなった場合だけでなく、何らかの理由で障害認定日当時の診断書を入手できなかった場合にも事後重症請求を行うことが出来ます。

社労士
社労士

事後重症請求が病状が事後に重くなった場合だけでなく障害認定日の診断書を入手できなかった場合にも行うことが可能です。

障害認定日の診断書は障害認定日から時間が経過してしまうとカルテが廃棄される等で入手できなくなる場合があります。担当医が移動してしまったり病院自体が廃院してしまった場合にも障害認定日当時の診断書を入手できなくなる例の一つです。


遡及請求とは障害認定日から一年を超えて障害年金の請求を行う場合に行う請求方法ですね。遡及請求は障害認定日から長期間経過してしまった場合でも行うことができるのでしょうか。
アシスタント
アシスタント
社労士
社労士

遡及請求は障害認定日から何年経過してしまっても行うことができます。一方で障害年金の請求には消滅時効の考えがあるため最大で5年分のみを受給することが出来ます。

事後重症請求の注意点

65歳以降は請求できない

事後重症請求は65歳以降は行うことができません。正確には65歳の誕生日の前々日まで行う必要があります。

障害年金の請求は65歳を過ぎた場合は障害認定日請求のみが可能で事後重症請求を行うことはできなくなってしまいます。

このため事後重症請求で障害年金の請求を希望する場合は65歳になる前に行う必要があります。

1か月でも早く手続きを行う

事後重症請求の場合、障害年金は手続きが終了した月(書類を年金事務所等に提出し終わった月)の翌月分から受給することができます。

このため月末までにお手続きを終了した場合は翌月分から年金を受給できますが、月を超えてしまった場合は翌々月分からの年金の受給となってしまいます。

例えば3月31日に手続きを終了すれば4月分から年金を受給することができますが一日遅れて4月1日に手続きを終了した場合は5月分から年金を受給することとなり1日遅れただけで一ヶ月分年金を損してしまうことになります。

このため事後重症請求を行う場合にはできるだけ速やかに手続きを終了し月内に手続きを終わらせることが重要です。

遡及請求ができるかどうか検討する

事故重症請求を行う場合には事前に必ず遡及請求ができるかどうかを検討する必要があります。

本来であれば障害認定日の診断書と現在の病状を記載した診断書の両方を提出し遡及請求が可能であったのにもかかわらず現在の病状を記載した診断書のみを提出したために過去の分の年金をもらい損なってしまう場合があります。

このため事後重症請求を行う前に必ず障害認定日当時の診断書が入手できるかどうかを検討し、入手できる場合は現在の病状を記載した診断書とともに障害認定日当時の診断書も提出し遡及請求を行うようにすることが重要です。

事後重症請求の受給事例

受給結果

障害基礎年金2級決定

年金額:816,000円

ご依頼時の様子

ご依頼時は現在の病院で強迫性障害とうつ病と診断されているとのことでした。ご自身でお手続きをすることが難しいのでぜひ手続きの代行を依頼したいとのことでした。このため一度ご面談させていただき今までの経緯についてお話を伺うこととしました。

ご面談場所に伺いましたがなかなか合流することができませんでした。ようやく合流することができお話を伺ったところ現在の病院では強迫性障害と診断されているがうつ病かどうかはもう一度先生に確認しなければ分からないということでした。

このため手続きに必要な範囲でお話をお伺いした後もう一度現在の病院に障害年金の診断書の作成の可否、診断書の作成をしていただく場合の病名について確認することとしました。

後日現在受診している病院に確認したところ現在の病名は強迫性障害でありうつ病で障害年金の診断書を作成することはできないとのことでした。

このためこの時点で遡及請求は困難となり今後は事後重症請求を行っていくこととなりました。

その後の事後重症請求のお手続きの流れ

ご面談時に忘れ物や失くし物、遅刻等が多く人と上手くコミュニケーションをとることが苦手であるとお話を伺いました。また学生の頃に発達障害ではないかと言われたことがあるとのことで、弊所とのご面談時の待ち合わせにも時間が掛かった経緯がありましたので大人の発達障害の詳しい病院をご案内し受診していただくこととなりました。

受診の結果自閉症スペクトラム障害とうつ病と診断され障害年金用の診断書を作成していただき障害年金を無事受給することが出来ました。

手続き後の感想

受診されていた病院では強迫性障害と診断されていたため障害年金の対象とはなりませんでした。

一方でお話を伺ったところ発達障害の症状があったため別の病院をご案内し自閉症スペクトラムという診断を受け無事障害年金を事後重症請求で受けることが出来ました(強迫性障害は神経症のカテゴリーに入るため障害年金の対象とならず遡及請求は出来ませんでした)。

パニック障害やうつ病の裏に発達障害が隠れているケースが大変多いですが精神科の病院でもこのようなケースが見過ごされている場合が多く見受けられます。

 

 

 

 

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